クリスマス・ハネムーン【ML】
 
 それにしても、僕は……なんて夢を見てたんだろう?

 僕が、裏の世界に居る時。

 ハニーは、一刻も早く、僕に陽の当たる所へ出て来いと。

 自分なりの正義感に照らし合わせて、一生懸命、僕を導いてくれたんだ。

 それを考えると。

『一緒に生きて行こう』と言った僕と一緒に。

 簡単に『何の関係無い人々を巻き込んでの死』を選んでしまうとは、思えなかった。


 けれども。


 ……本当は、怖いのかもしれない……


 ハニーの寝顔を見ながら、ふ、と湧いて来た感情に、自分自身でも驚いた。

 彼が『簡単には』無茶なコトをしないって判っても。

『必要とあれば』目的のために手段を選ばないコトを知っている。

 そして、出来ないことは、言わない。


 今まで、知らなかったハニーの力に驚いて。

 多分、ココロが本能的な感情に、震えたんだ。



『怖い』と。



 そもそも、幽霊の存在は信じていなかったし。

 今まで、ケガをしたり。

 ともすると命をやり取りするような。

 暴力の場面に立ち会っても、感じなかった感情だった。

『怖い』なんて、本来なら『負』の感情のはずなのに、懐かしささえ感じるのは。

 まだ未来を信じていた子供のころ以来忘れていた、心の動きだったから。

 夢も希望も大切なものもないのなら。

 何も怖いモノは無い。

『奪われてはいけない』モノが出来たから『怖い』と感じられるようになったんだ。

 僕の場合は、とても複雑で。

 奪われたくない大切なモノも。

 大切なモノを奪ってゆく可能性がある者も。

 共に『ハニー』なんだけれども。

 この強烈な感情の前では。

 昔、必死に守っていたはずの『姉』の生死の行方でさえも。

 恐怖ではなく。

 倦怠感に思えて、彩(いろどり)が薄れてしまう感じがする。

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