クリスマス・ハネムーン【ML】
……仕方ないか。
携帯電話や、薄型テレビの画面、液晶パネルについて、研究し。
最先端技術を家庭用機器にする仕事をしているハニーは、とても忙しい。
二週間ほど前。
欧米諸国が、長いクリスマス休暇に入る前には米国に出張してたし。
おとといの昼間までは、中国と韓国あたりをうろうろしていたはずだ。
ハインリヒ・ヴァルトヒェン・霧谷。
誰が、どう見ても、エリート・コースを突っ走っている彼は。
容姿と収入から鑑みるに。
多分、どんな女性を口説いても、まず落ちるだろうに。
よりにもよって、半分壊れかけた『男』の僕なんぞを相手にしているのか、今でも激しく謎だった。
水商売から、諸般の事情で、看護師に職業換えをした僕が、よほど珍しかったのか?
それにしたって、酔狂にもほどってものがある。
まあ、そもそも研究一筋、職人肌な人間で。
今まで異性だの同性だのの、好みがどうというより。
恋愛自体に興味が無かったようだった。
そして、僕の方だってハニーに出会ってから何かが変だ。
本来なら僕も男なんて、興味はなかった。
前の職業は、女性客相手の水商売だったし。
その頃には、何よりも立派に『彼女』がいたんだ。
同性の男なんて言うモノは、どこをどう考えても。
仕事上のライバルか、もしくはせいぜい友情しか感じなかった。
一応、商売の関係で、知り合いには、同性愛者もいた。
でも、彼らの嗜好には、どうしてもついて行けず………
当時はむしろ、気持ち悪い、と嫌ってたぐらいだったのに。