クリスマス・ハネムーン【ML】
 互いに、もともと同性愛に興味がない上。

 公園や、サウナみたいなクルージングスペースとか。

 同性愛者が相手を見つける『発展場』っていう場所じゃなく。

 そんなにマニアックじゃない。

 ごく、普通に家電量販店でソフトが売られているような。

 オンラインネットゲームのオフィシャルイベントで知り合った以上。

 本来なら『友人』になるべき相手がなぜ『愛人』になってしまったのかが、謎だった。

 まるで、洗濯機の中に、取り出した魂を放り込んで水洗いでもしたみたいに。

 何が何だか良く判らないうちに、怒濤のように感情をぶつけ合い。

 ノリで性欲を満たし合った結果が、これだ、というしかない。

 普通の『愛』のかたちをすっかり見失ったくせに。

『嫉妬心』だけは、わき上がる。

 僕の隣に座っている白人男と同じで。

 眠りこけ、無意識にハニーに張り付いているだけの女の子をどうするコトもできず。

 いらつく感情をもてあまし。

 とうとう、僕は酒を飲んで寝てしまおうと、近づいてきたキャビンアテンダントに、手をあげた。
 
「すみません。
 ワインを………」

 ください、と言いかけた声を別の声がしっかり遮った。

「いや。オレンジジュース二つ」

 その声に見れば。

 ようやく起きたらしいハニーが、緑色の目で僕を睨んでいた。
 
「螢(ほたる)君。
 君は、Dr(ドクター)から『禁酒』を言い渡されてなかったか?
 警告を無視して、自分の壊れかけの肝臓と精神(こころ)にトドメを刺すつもりかね?」
 
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