クリスマス・ハネムーン【ML】
ナンパ!?
言うにこと欠いて女を引っ掛けて来い、だとぅ!?
僕は、お前が言った、その。
『相手をしても、つまらない男』と新婚旅行に来たんだぞ!!
そりゃあ、ね。
クリスマス本番の夜は、イヴよりも、重要度は、低いとは言え。
昨日の夜は、飛行機の上だったんだ!
だから、今夜は色々期待していたのに!
ハニーに仕事を勝手に入れたのは、お前じゃないか!!
僕は、とうとう。
怒りにまかせて、がんっ、と乱暴にダイニング・テーブルを殴りつけると、静かに言った。
「僕の分の夕食は、要りません。
食事をしにも、出かけません。
部屋で『一人で』勝手に飲んでますから」
「飲むって、お酒ですか?
ダメですよ!
霧谷さんが、あなたに、酒だけは飲ませるなって……!」
そう、僕をとめる佐藤を見て。
ハニーについても、ちらっと怒りが湧いて来た。
あいつは、僕の事情をどれくらい佐藤に教えたんだろう?
当の本人の僕に断りもなく、勝手に!
僕は、不機嫌なまま。
冷蔵庫に常備されているワインを二、三本取ると、言った。
「別に、ニ十歳前の子供じゃあるまいし。
自分の飲める量ぐらい、知ってます。
僕のことは、放っておいてくださいね?」
そう言って。
ぎら、と。
一睨みしてやったら、今度声を失ったのは、佐藤の方だった。
どうやら、僕が怖いらしい。
ふん!
……草食動物のカンなら、良いセンいってるじゃないか。
僕は、鼻で笑うと。
適当なグラスとチャーム(つまみ)になりそうなものを見つくろう。
すぐに出て来たのは。
チーズとチョコレートぐらいだけど、ま、いいか。
僕は、一式抱えると、気づまりなリビングから出て行った。
呆然としている佐藤、一人残して。