クリスマス・ハネムーン【ML】
「……蛍(けい)?
 あたしに、一体何をするつもりなの?」

 怯えて震える女に、僕は、嘲笑(わら)う。

「何をする?
 こんなビルの屋上に呼び出して。
 最初に仕掛けて来たのは、お嬢さんの方だろ?
 ガタイの良いヤツ、何人かで囲めば。
 僕がビビって引くと思った?」

 ……なんて、莫迦なヤツ。

 僕がちらっと見る視線の先には。

 ちょっと金持ちな親父さんを持つ女が雇ったらしい男達が、何人か。

 僕に殴られて動けなくなっていた。


 どんなに体格に恵まれていても。

 あるいは。

 ちょっとぐらい、何か格闘技をやってても。

 一度も本気(マジ)喧嘩をやったことの無いヤツは、何人来ようと僕の敵じゃない。

 人を傷つけることに、一瞬躊躇して、拳が遅くなるから。

 油断さえしなければ、結構簡単にやられてくれる。

『僕に裏切られて』あるいは『店に支払い』が出来ずに。

 僕を闇うちしようと言う人々は、あとをたたず。

 こんな風に、人数をそろえて襲って来るのも日常茶飯事だったけれども。

 僕の前に立つ者は、皆。

 雪の中で凍えるように。

 次々と、確実に倒れてゆくから。

 いつしか。

 僕は。

 雪の王子、なんて呼ばれるようになっていた。


 
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