クリスマス・ハネムーン【ML】
「ど……どうしましょう!
 わたしたちが、誰かって聞いてますよっ!」

「……『ふー?』だろ?
 いくら僕が、英語が苦手でも、さすがに、それくらいは判る」

「ほ……螢さん!」

 すっかりビビって、うろたえる佐藤を手で制して、僕は、近づいて来る者達を睨んだ。

 と。

 ぱち、と軽い音がして、誰かが、工場の灯りをつけた。

 突然、輝いた光がまぶしくて一瞬目を細めたものの。

 僕と佐藤を出迎えたヤツらの数を確認する。

 この場所は、三階建て部分まで全部を突き抜けた大きな船舶のメンテナンス工場と。

 工場の壁に貼り付くように金属製の螺旋階段があり、それぞれの階の住居部分らしい所につながっている。

 その一階部分から出て来たのは。

 ……だいたい、十五人弱ってところかな?

 でも。

 半分くらいは、女性で、残りの半分くらいは、ひ弱で頭でっかちな学生、っていう感じだ。

 もし、腕力に訴えなくちゃならなくなったとき。

 本当に注意しなくちゃならないのは、せいぜい、三、四人かと。

 昔、つちかった、闘争本能のまま。

 それだけを瞬時に見積もって、僕は声を出した。

「こいつらがハニーを洋上でさらったの?
 ……佐藤。
 霧谷さんが今、どこにいるか、聞いて?」

「で……でも」

 僕達を囲むヤツらがどんな種類かわからずに。

 ただ、人数の多さに、怯えているらしい佐藤に、僕は、低く声を出した。

「僕達が、刑事でも、ルールを無視した犯罪交渉人でもなく。
 環境問題も、関係ない。
 ただの家族だって、強調したら、多分大丈夫だから。
 早く聞いて」

「わ、わかりました……っ!」

 佐藤は、がくがくと頷き、ぼつぼつと何かをしゃべり始めた。




 ……のだけれども。

 予想に反して、僕達を囲む人々の空気が収まらない。

 いや、むしろ。

 だんだん険悪になってくるようなのは。

 ……気のせいか?

 
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