カウントダウン
「彩音……悪かったな。こんなつもりはなかったんだけど。これからはキチンと整理する」
「もう、いいよ。本当に」
「拗ねんなよ」
埒があかない。
ねぇどうして?いつだって追いかけるような人じゃなかった。
いつもいつも私が追いかけて、すがって、ご機嫌取りをしてたのに。
合鍵を渡されてから、頼まれた通り身の回りの世話を必死にした。
何度作っても手をつけてくれない料理も悠斗のウチに行く度に作って、悠斗が喜びそうな話題を必死に探した。
他の女の子と仲良くしないでって伝えてもウザい女って怒鳴られて罵られて、だから極力言わないようにしても、やっぱり想いが爆発しちゃって、
そんな時は曖昧に誤魔化されて……それもベットの上だけ。
セックスが、心地良いものなんて思った事は一度もなかった。
そのくらい勝手な男。
なのに、今日の悠斗はすごく必死。
「なーに騒いでんだよ。俺がコンビニ行ってるだけですぐコレだ。俺だけノケモノとかチョウ寂しいんですけどー」
「翔さん、すみません。俺が原因かも」
「かもってなんだよ」
親しそうに話すその相手は、その場にいるだけで空気が違った。
ざわついていた人達は口々に挨拶をして、悠斗も祐介も一目を置いている感じ。
髪はフツーに黒髪だけど、格闘技でもやってるのか鍛えあげられた肉体は服の上からも見ただけで分かる。
そんなゴリマッチョの横には、ふんわりしたかわいい雰囲気の女の子がニコニコしている。
「彩音、翔さん。お前に会わせたかった人」
不意に紹介されて、心臓が跳ねた。
柔らかい笑顔を見せているのに目の奥が笑ってない。
「初めまして、彩音と申します」
とりあえず挨拶をすれば、翔さんの表情が崩れた。
「そうか、じゃーあんたが悠斗の大事な女か!」
不信がる瞳から、穏やかな瞳に変化。一番驚いたのは、私を知っていたという事。
だって、お気に入りのセフレの話しか悠斗はしないって祐介言ってたのに……。
悠斗の考えが分からないよ。