カウントダウン



「彩音ちゃん、こっちおいで」


不意に声をかけてきたのは翔さんの隣でニコニコしている女の人。


「ほら、ここはお腹を空かせたオオカミさんがたくさんいるから危ないよ」


ニコニコ笑う彼女は、言葉遣いや声までもかわいらしい。


手を引かれて促されるまま室内に移動すれば翔さんの声が響いた。


「オマエラ、サッカーで勝負しろ!勝ったチームには賞品にアイスあるぞ!!」


なんて言って、みんな楽しそう。


「彩音ちゃん、みんなコドモだと思わない?いっつもああやって騒いでるんだよ。彩音ちゃんは色々心配事があると思うけど、悠斗クンは女の子を相手にしてるばっかりじゃないからね」


私を隣に座らせて、必死にフォローをしているこの女性は、ずっと私の手を握って、空いた手で赤く腫れた頬を心配そうに撫でてくれた。



「……私はもう、いいんです」


「ダメっ!!まだ諦めないで!!」


「あれー?茉莉ちゃんもう仲良くなったの?さすが俺のオンナ」



いつの間にか室内に来た翔さんは彼女を自分の隣へと引き寄せていた。


「もう翔!!私は彩音ちゃんと一緒にいたいのに〜」


なんて文句を言いながらも隣でニコニコしているから、嫌な訳じゃないんだろう。



ただ、それだけの行為なのに二人がとてもお似合いでしっくりくる。相思相愛、そんな言葉が具現化しているような雰囲気。


そう言えば優衣と智也先輩にも同じ空気が流れてた。

私と悠斗には出すことの出来ないオーラ。






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