カウントダウン


――――…遠くの方からバイクの音が聞こえた。

バイクについて詳しくないけど、悠斗の音と違う。そのくらいなら分かった。



涙は止まっているのに今度は心臓がドキドキとうるさく止まらない。


チャイムが鳴る前に、全身が待ちわびたと言うように玄関のドアを開けたら、月の明かりにぼんやりと照らされた祐介が驚いた顔で私を見つめた。


「……なんで電気つけないの?てか、出るの早くね?放置プレイ大好きなどMちゃん」


「……うっさい」


暗闇の中で、意地悪な言葉が聞こえてきたけど、その声色は驚くくらい優しくて、ポンポンと頭を撫でてくれるその温度も……とっても、とっても、優しかった。


「……入って」


「あぁ……」


カチャンと静かに閉まるドアがきっかけになってしまったのか、祐介の優しい温度に触れて、止まっていた涙腺も再び崩壊して、声は出さずにただポロポロと雫だけが落下していく。


「電気つけろって……」


「つけないで!!」


「彩音?泣いてんの……?」


「……ごめんね、来て貰ったのにめんどくさい事になってて」


「めんどくさくなんかねーよ。何かあったの?」


「聞かないで……でも、今だけ……一緒にいて」


「聞かないで、って……ま、いいや。取り合えず落ち着くまでこうしててやるよ」


「あっ……」


かなりのワガママ女だ私。夜中に呼び出して、理由も言わずに泣いて、だけど一緒にいてだなんて。


なのに祐介は、そっと抱き締めてくれて、涙が止まるように背中をトントンと優しく叩いてくれている。



意地悪な人、なんていつだって見かけだけ。


傍にいれば分かる祐介の優しさ。祐介は、少し不器用なのかもしれない。


「ありがと、祐介……いつになく優しいじゃん」


不器用なのは私も同じ。
素直にお礼だけ言えばいいのに余計な一言まで添えちゃって……。


「俺は誰にでも優しく出来る訳じゃねーの。彩音はもっと自覚しろよ、俺がこんなに特別に扱ってんのに……。もっと感謝しろ」


「何がもっと感謝しろ、だよ。その一言が余計なの!」


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