カウントダウン
「……祐介の口から王子様って単語が出てくるなんて思わなかったーあははっ」
「茶化すなよ。本当の事だろ?悠斗はあんなだし、アンタにとっては辛い思い出ばっかりかも知んねぇけど……彩音をちゃんと見てたよ」
「……そー、かな……?」
「俺は……悠斗みたく優しくないから。アイツの心根は凄く優しいんだよ。それに気付く奴が少ない。アイツと関係を持ちたがる女は、お年寄りや子供、身障者に優しい悠斗を見つけない。
でも彩音はさ、知ってるんだろ?悠斗のそうゆう優しさ」
「……祐介といる時はそーゆー顔しないでとかさっき言ってたじゃん、ほっぺまで引っ張って。悠斗の事考えてさせるなんて、矛盾してるよ」
「悪りィな。でも言ったろ、俺は優しくないって。
初めはさ……悠斗の優しさに気付いたアンタが悠斗の彼女で良かったって思ったんだ。
……馬鹿だよな、悠斗の女って分かってたのに、隠れて会って弁当作れとか、理由つけて休みの日にアンタを誘って……
アンタの傍にいて、アンタと話して……コロコロ変わる表情や仕草を見て……もう抜け出せないくらい、好きになってた。悠斗から、奪いたい。
振り返って、そーいえばまともに恋なんてしてこなかったと思う。
だから、彩音とこうして会って話して、初めて知った。恋って、スゲー苦しいんだな。
それに俺は、悠斗の事も苦しめてる。彩音の事も、苦しめてる?分かんねーよ。何が正しいのか」