カウントダウン
「雅治の悪口はやめて」
「ハイハイ……あ、アンタ親に連絡いーの?ごはん作って待ってたんじゃねぇの?」
笑顔のまま今度は私の心配までしてくれる。やっぱ、優しい人。他人の評価では図れないものなんだね。
「大丈夫、私は親に放置されてるから。一緒にも住んでもらえないし」
正直に言ってしまったのは祐介の心に少しだけ触れてしまったからかもしれない。
友達の彼女に優しくしてくれる、ただそれだけかもしれないけど、何だか祐介には飾らない自分を晒け出される。
「……悠斗と同じ、か。アンタも大変なんだね」
「そーでもないよ」
悠斗と同じ、でもない。だって私はある意味親に捨てられた。でも悠斗は両親が海外で活躍してるから日本に中々戻れないだけ。
「同情はいらないよ」
「は?俺が彩音に同情する義理ある?」
「……ない」
祐介はいつの間にかシーハーも終わっていて、伝票を持っていた。
「ほら、もう帰るぞ。送ってくから」
「え?いいよ」
「遠慮すんな。こんな時間に一人で帰したら……悠斗に怒られんだろ、俺が」
「や、別に怒られないと思うよ」
「いーから送られろ」
さっさとレジに向かってお会計を済ませて、やっぱり私の分のお金は受け取ってもらえなくて……おまけに家まで送ってくれている。
「ごちそうさま。なんか色々ありがとう」
「別に」
お店の外に出れば、私の家までの道のりを意外にも、歩幅まで合わせてくれている。
長身なのに、私に合わせてくれるのがほんの少しだけ嬉しかった。