カウントダウン
「……ついた」
誰にも聞こえないくらいの呟きを吐いた。
そっとドアから様子を見れば、一番奥に、女子が群がっている。悠斗はきっとそこの中心。その隣りに不機嫌そうに座るのが祐介。
少しだけ観察を始めたら、女子の怒鳴り声が聞こえた。
「ちょっと、ユースケ!!信じらんない。オナラとかマジアリエナイから!!臭いんだけど」
「ウルセーな。テメェのババアみてぇな香水の方が臭せぇよ!!付け方知んねぇの?歩くバイオテロリストが!あー臭せぇ。近寄んな!!」
……毒舌。
うん、取り合えず……ビバ☆噂通り。期待を裏切らない男だ。
女の子涙目だし、悠斗の取り巻きとはいえなんか可哀想。
お取り込み中だし、戻ろうかなって思ったら祐介に見つかった。
「早く入れば?」
どんな早業を使ったのか祐介は既に入り口まで迎えに来てくれていて、背中を押された。
「ちょっ、祐介待ってよ」
「悠斗、愛しの彼女ちゃん。お弁当持ってきてくれたよ?」
女子の群れを掻き分けるように祐介に悠斗の前まで押されれば、昨日腕を組んで私を笑った女の子が悠斗にかわいらしいお弁当箱を広げていた。
「ねぇねぇ祐介、お気に入りのセフレってあの子?」
小さな声でこっそり聞いたのに。
「ちげーよ、アイツじゃねえ。19才の女子大生だよ」
デリカシーのない祐介は大きな声で、具体的に言い切りやがった。
「またお弁当持ってきたの?ねぇ彼女さん、いい加減気付きなよ、悠斗は優しいから言えないんだって。これからはアタシが作るから、あんたのマッズイお弁当で悠斗が体調崩したらどーすんのよ」
鼻で笑う彼女は、この女子の群れのボスなんだろう。それを合図にバイオテロリストを含む女子達が口々に馬鹿にした。
悠斗は何を考えているのか無表情。