カウントダウン
祐介はただ笑うだけ。
もちろん手は繋がない。だって私たちは違うから。そんな関係じゃない。
だけど、それも心地良いって感じた。付かず離れず肩を並べて歩くこの距離。
「なぁ、アンタいつまでそのいかがわしいティッシュ持ってんの?欲求不満?つーか、女の持ち物じゃねーよソレ」
ケラケラ笑いながら指差す“ソレ”。上半身を露にしている女性(乳首に星マーク入り)が下半身を隠すかのようにその部分に電話番号と地図が書かれている……いわゆるピンクなもの。
「く、来る途中で受け取っちゃったのよ!私には関係ないものだから、はいこれ祐介にあげる!」
「いらねーよ。てか、俺は金払ってまで女抱きてぇって気持ちがわかんねぇ」
「そりゃ祐介とか悠斗は女の子の方から寄ってくるかも知れないけど、そんな男ばっかりじゃないでしょ?そーゆー人達に失礼よ!……って、祐介の場合はそんな意味じゃないか」
「あ?なにそれ、どういう意味だと思ってんの?」
「だって祐介は……」
本当に気が緩んでた。軽率だったと思う。もしかしたら悩んでるのかも知れないし、最近の風潮はどんな恋愛だって受け入れられているけれど、やっぱり風当たりはまだまだ厳しいと分かっていたのに。
私は、こんな大通りでつい口に出してしまった。
“男の子しか愛せないんでしょ?”
言ってしまった。
幸い周りには特に誰もいなくて、離れた場所に何組かのカップルがいただけ。
だけどその言葉は確実に祐介の耳に届いてて、恐る恐る顔を見上げてみたら、呆れたような、驚いたような、何とも言い難い表情でため息をついていた。