カウントダウン
ケジメ、つけなきゃ。そう分かっていたのに頭の中は祐介の冷たい表情と言葉をぼんやりと思い出しちゃって……。
放課後、悠斗と話をする約束さえ覚えていられなかった。
あの後祐介はどうしたんだろう。そればっかり。
バイトを終えて外に出た時、悠斗の姿を見つけて初めて別れ話をするのを忘れていたことに気付いた。
「なにシカトして帰ってんだよ。お前のために待ってたのにフザケやがって」
「ごめん……ちょっとうっかりしてて」
「……乗れよ」
「……いい」
「ワガママ言ってねぇでさっさと乗れよ」
強制的に乗せられたバイクで向かう先は悠斗のマンションじゃなくて私の家。
「今日、様子がおかしかったから。早く休め」
別れ話の前に優しくされる。これってよくある事なの?
結局私には悠斗の気持ちを最後まで分からなかった。
「悠斗、あのね……話が……」
不安と緊張がぐるぐると回って、決心して伝えようとした言葉は、家の中から聞こえたガラスの割れた音で遮られる。
「彩音は下がってろ」
ただならぬ雰囲気。室内に誰かいる。
不安で震える私を庇いながら玄関のドアに降れる悠斗は“開いてる”と呟いて扉を開いた。
玄関とリビングは電気がついてなかったけど、奥の部屋にうっすらと明かりが。
「随分堂々とした泥棒だな」
緊張で声が出ない私を後ろ手で庇いながら玄関の明かりをつければ、奥の部屋から見知った人物が出てきた。