カウントダウン



「お母……さん……」


「久しぶりね、彩音。ごめんね花瓶割っちゃった。後で片付けといてね」


母親に会ったのは、一年ぶりだった。


以前より派手になっていて、少し痩せて綺麗になった。


そこには昔の母親の面影がない。女の顔をしている。


「今更、何しに来たの?」


「ねぇ彩音、通帳と印鑑知らない?アンタの父親から振り込まれてるんでしょ?お母さん少し困ってるのよ。ね、出して」


「バカ言わないでよ!あれは私の学費と生活費……」


「だから、少し貸してよ。それより、アンタ高校やめれば?その分お金浮くんだし」


「ふざけないでよ!!どーしちゃったのよ。お母さん昔はそんなんじゃなかった」


「うるさいわね!さっさと通帳だしなさいよ!!」


母からは、少しお酒の匂いがした。


私の小さい頃はもっと優しかったのに。こんなにも変わってしまった。


「……とりあえずここに30万あります。これで許してもらえませんか?」



言い合いをしていた私たちの間に割って入ったのは悠斗で、銀行の封筒に入ったお札を差し出していた。



「悠斗、なんで?やめて!!いいのそんな事しないで」


「あら?あなた彩音の彼?素敵な彼氏ね。ありがとう、必ず返すわね。それじゃあ彩音、またね」


「お母さん、やめて!!返して!!私が出すから!!悠斗に迷惑かけないでよ!!」


当たり前のように封筒を受けとる母に沢山の抗議と体を張って抵抗をしてみたけど、悠斗に遮られてその隙に母は家を出て言った。



「なんで……?なんで悠斗はあんな人にお金を渡しちゃったの?そもそもあんな大金……」



玄関先で泣き崩れる私を支えながら、悠斗は気にするななんて優しく囁く。



「バイク、メンテに出してたんだ。その修理代をこの後持っていく予定だっただけ。気にすんな、金は俺の親が勝手に振り込んでくるから」



「そーゆう問題じゃないよ。お母さん、ただ男に貢いでるだけなの。あんな大金すぐに返せないよ」




「……彩音のためならなんでもしてやる。それにあの金は返さなくていい。





だって俺たち、ずっと一緒にいるんだろ?」




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