パステルカラーの恋模様

学校に着いて、下駄箱で靴を履き替えていると、一限目の始まりを告げるチャイムが鳴った。


きっと走ったって間に合わない、と思った私は、サボろうか、教室に遅れて入っていこうか、迷った末、結局教室に向かう事にした。


サボるにも、あの屋上には行けない。

行ったらきっと、また泣いてしまうから……。



なるべくゆっくり教室に向かい、ガラッと教室の後ろのドアを開けると、皆が一瞬私に注目した。


「…おはようございます」


すると、近くにいた子達が、「美園、おはよ」と声をかけてくれる。

私は、皆に適当に挨拶を返し、席についた。



一限の担当、英語の樋口先生が何やら書き込みながら、



「柚木は、社長出勤かぁ~?」



とおどけた。すると皆どっと笑った。

あたしもおどけて、いや~困ったなぁといったように、笑って、後ろ頭をさすった。



大丈夫、ちゃんと笑える。



「じゃあ、続き行くぞー。本文の3行目のwhatは関係代名詞で……」


先生はまた授業を開始した。

あたしが机から教科書とノートを取り出していると、明日香が後ろを振り返って笑った。


「おはよ、美園」

「おはよ。まいったよ、遅刻、遅刻…へへ」

「珍しいね、美園が遅刻なんて。何かあったの?」

「あーっとね…道で困ってたお婆さん助けてたら遅れた!」




そう言うと、明日香は「はぁ?」と笑った。
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