【短篇】こ い い ろ 。
今の季節は冬。
裕也は帰ろうとしていたのか、黒いマフラーを巻いて通学かばんをリュックのように背負っていた。
ていうか、なんの為に私にわざわざ?
すごく気まずい。きっと裕也もあの日のことは忘れていないはず。
「あのさ。あの日のこと覚えてる?」
ほらね。
「うん」
覚えてるよ、鮮明に。
私達は幼なじみで、小学生の頃から学校にはずっと一緒に登校していた。
中学生になってもそう。登校も下校も一緒にして、学校が早く終わったらお互いの家に遊びに行ったりもして。
その頃は幸せだった、すごく。
だけど中3の冬、いつものように帰りに裕也の家に寄ってゲームをして遊んでいたら
突然、キスをされた。
触れるだけのキスだったけど、唇だったし、ファーストキスだったから、って理由もあるけどただ泣いて、ごめんと謝ってくる裕也を平手打ちした。
それから必要最小限の事以外では話もしていない。一緒に帰ることも自然となくなり、同じ高校に行って同じクラスになったけどグループ自体違う。私は高校生になって友達1人もいないけど。