カモミール・ロマンス
昼過ぎでピークは過ぎていたので、沙織達の焼きそばが出来るまでの間に新しい客は入らなかった。
その間に翔が2人に話し掛ける。
「それって山女の制服ですよね?」
「へっ?……さんじょ?」
ワッペンに書かれた旧書体の『山』の文字を指しながら翔がそう言った。
「あ、略したら分からないのか。
山田川女学院の生徒さんですよね?」
「あ、はい。そうです」
「……えっ、なに?山田川女学院の子が来てるの!?
って、うわっ!マジじゃんか!」
翔達の会話を聞き付けて奥から男子生徒が覗き込んできた。
「山女の子が他校の文化祭に来るなんて珍しくね?」
「ってかお嬢様学校だもんな。山女の文化祭とか関係者しか入れないし」
男子生徒のはしゃぎっぷりを見て香代が笑った。
「……なんか、山田川女学院ってだけで人気者になっちゃったね」
「に、人気者なのかな?これ。
ただ珍しがられているだけなんじゃ……」
温かい陽射しと、ソースの匂い。
活気あふれる賑わいの中で、沙織の緊張は少しずつほぐれていくのだった。