カモミール・ロマンス


それからほどなくしてトイレから勇気が帰ってきた。

「ただいまー。お客さん来た?」

勇気は鉄板のはじに残っていたパリパリになった焼きそばをつまむ。

接客を交替してジュースで一息ついていた翔がそれに気付いた。

「あーユキまたつまみ食いして。委員長に怒られるよ?」

「怒られるって言ったって、委員長は担任と消えたっきりじゃんよ」

テントの脇に折り畳んであった椅子を引っ張りだし、勇気は翔の横に座る。

「……あ、そういえば沙織さんとの待ち合わせそろそろじゃない?

さっき山女の子達が来てたから、もう着いてる頃かもよ」

「え、さんじょ?」

「あーゴメン。ユキに言った僕がバカだった。

沙織さんと同じ学校の子達が来てたんだよ、ついさっきね」

「……そっか」

勇気は表情も変えずにそう言った。

緊張はしていると思う。

けれど舞い上がっているわけでもなさそうで、翔はくすっと笑った。

「楽しみだけど不安もいっぱいだね」

翔は笑顔でそう言った。

「うん、そうなんだよ」

「そっか……楽しいね」

「うん……そうだな」







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