カモミール・ロマンス
沙織との待ち合わせは11時。
「は、早く来すぎちゃったかなぁ…………ははは」
勇気は駅の中央に設置された時計を見る。
10:05。
約束の時間まで55分。
「話には聞いてたけど、まさか自分がこんなアホみたいに早く待ち合わせ場所に来ちまうとはね」
沙織からのメールは何度も何度も確認した。
勘違いじゃないか?嘘かもしれない。夢の中で約束したのかも?
そんなバカみたいな不安を拭い去る様に何度も。
何度も。
「これで沙織ちゃんが現れたりなんかして、「ごめんね、待った?」なんて言われて「今来たとこだよ」なんて……はは」
「ユキくん、ごめん待たせちゃった?」
「ううん。全然、今来たとこだよ。
……って、沙織ちゃん!?」
突然現れた沙織。
勇気がぼーっとしていた為、時間は流れる様に過ぎていた。
それでも約束の時間にはまだなっていなかった。
「早く来すぎちゃったなぁって思ってたら、もうユキ君がいるんだもん。
ビックリしちゃったよー」
初めて見る私服姿。
大人っぽいシンプルなデザイン。
長い黒髪は後ろに結わえて、流している。
「行こっか」