カモミール・ロマンス


地元のバス停に着いたのはちょうど6時を回った時だった。


部活帰りだろうか、いつもり多くの学生が通りを歩いている。

バスから降りた勇気がぼーっとしていると

「……え、うそ」

勇気は通り過ぎていった、あの甘い香りに振り返る。

1人で歩いている女子学生。

勘違いかもしれないと躊躇われる。

しかし小さな偶然が目の前にあるかもしれない。

雲を掴むことなんてできない小さな手でも、ほんの少しの勇気を握り締めて勇気は駆け出した。

「……あ、あの!」

突然の声に女子学生がゆっくりと振り返る。





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