カモミール・ロマンス

学校前のバス停には誰もいなかった。

「うわ、ただでさえ遅くなっちゃったのにバス来るのあと15分もかかるの?」

勇気は備え付けられた白いベンチに座る。

綿菓子を掴めない手はまだ開いたままだ。

「……会いたいな。会えないかな」

りんごの香りはいつまでも勇気の中で、胸をくすぐる。

虚しくなってきてため息を吐くと、バスがやってきた。





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