秘密の恋の詩
「では、気を取り直して出席を取りまーす。」

ようやく出席を取り始めた。
というかあたしはすぐ呼ばれるんだけど。

「蒼村結衣さーん」
はいっ、と返事をして、先生に向けていた目を窓の方に向けた。
ぼーっと空を眺める。

うわの空でクラスメイトの名前を聞いていると、
「甲斐隆太さーん」
はい、といった瞬間、また女子たちがざわついた。
・・・ただ名前言っただけじゃんか。

「隆太くんっていうんだ!」
「かっこいいなぁ~」

なんだそれっ!!
態度が去年と全然違うんですけど・・・
やっぱり女子は王子様キャラに弱いのか。

あたしは絶対騙されないけどねーっ!

「これでHRを終わります、気をつけー、礼」
「ありがとうございましたー」

長かったHRが終わって、今日は何もせずに下校。
なんたって始業式ですから。
愛華ちゃんを呼んで、すぐ帰ることにした。

・・・何より隣の机の<王子様>の周りに集まってる人が
うっとうしくて仕方なかったからさー

「愛華ちゃん、帰ろーっ」

荷物をまとめてさっさと帰ろうとしたその時

''ガッッッッ''

・・・何の音?

そう思って振り返って自分の机を見てみると
・・・盛大にあたしのカバンの取っ手が引っかかって
破れてる・・・

蒼村結衣、大失態です!
あ~あ、どうしよう。。。キャラが明るいとはいえ
これはさすがに恥ずかしいっ!!

「あっはははっ!結衣、なにやってんの~」
「結衣ったらもーっ!!」
周りの女子たちにバカにされてちょっと傷つく。

こういうのって、あたし意外と傷が深いんだよね・・・
ちょっと泣きそうになって、急いでカバンを持ってその場を
離れようとする。

< 3 / 5 >

この作品をシェア

pagetop