ハネノネ ‐the world that you saved.‐
それから僕らは、ワクチンの精製に取りかかった。
僕が一度吐いた「ワクチンは作れない」という嘘を訂正するには時間が掛かったが、みんな笑っていた。
作り方どおりのワクチンを完成させると、やはり試験管にフタをして保存していた液体と一致したが、僕はそれを使わなかった。
これらは供え物なので、僕らが使っていいものではない。
時間ができたらチキュウに戻り、元の場所に戻そうと思う。
しかし、このノートの持ち主の死体は、この星で保存しようと思う。
「そのノート、いつも持ってますね。」
ひとりの女性に声をかけられた。
機械によるデータが普及する世の中で、今時筆記のノートは珍しいと思ったんだろう。
「これは、僕らの救世主のノートなんだ。」
僕は笑った。
久々に笑った気がした。