Sweet Vanilla Bean
少し振り向くとゆうたを抱いて走ってきた。
「あの、私、榊千鶴です。そこの公園のクレープ屋やってるんで、よろしかったら。お礼代わりと言っては何なんですがサービスするんで」
千鶴さんはニッコリと笑ってそう言った。
そしてお店のカードを渡して「じゃあ」と会釈してその公園の方に走って行った。
そういえば焦げ茶色のエプロンをしていた。
お店を飛び出して来たんだろうと思った。
千鶴さんも甘い香りがした。
(甘いもの嫌いじゃないし、今度、行こうかな)
私は《miel》と筆記体で書かれたカードを見た。
「おねぇさん」
また足元の方で声がした。