カノジョの秘密。
「あたしはあたしで精一杯生きてきたの!お母さんもお父さんもおばあちゃんもいないけど、お金だってないけど、精一杯生きてきた!これからだってそうしてく!お金がなくて浮浪者になるなら、笑い者にだって何だってなる!」

あたしのプライドは、何があっても負けないこと。
これからも、それは変わらない。

「あたしには、あたしの生活があるの。生き方があるの。それを、貴方の勝手な偽善とか価値観で、捩曲げたりしないで。」

何が金持ちよ、何が学校一の美少女よ。
そんなのに、負けたりしない。
あたしは、どんな状況になったって、生き抜いてみせるんだから。

隣の椅子に置いておいたカバンを、乱暴に持った。

この部屋から一刻も出たくて、出口へ向かう。
すると、

バンッ!

いきなり後ろから両腕が伸びてきて、ドアを閉められた。


「な・・、」

「行かせねえ。」

耳元で、低い声がなる。

「何するんですか!」

後ろを振り向くと、驚くほど近くに、堂島さんの端整な顔があった。

「お前忘れてねえだろうな。」

「・・は?」

「俺がお前を行かせるはずねえだろう、元をたどれば、お前が俺の秘密を知ったのが始まりなんだからな。」

あ・・!

「そ、それは・・!」

「お前まさか、俺がお前を助けようとしてるとか思ってんじゃねえだろうな?」

・・その言葉に、口をつぐむ。

「勘違いすんなアホ。俺はお前を信用なんかこれっぽっちもしてねえ。だけどお前、言っただろ。監視されるくらいなら、何でもします、ってな。」

だんだん、話の道筋が読めてきた。
冷や汗がだらだらと額を伝う。
今こそ自分を本当に呪いたい気分だった。

「散々に言ってくれたじゃねえか。でもな、お前に拒否権はねえんだよ。俺に目をつけられた時点でな。」


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