。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
戒の掌にちょこんと置かれていたものは隕石―――もとい指輪だった。
「これ………?」
あたしは目を開いた。
「お前にやるよ」
戒が照れくさそうに、頬をほんのちょっと染めてあたしを見下ろす。
それはさっき露店であたしが見ていた桜の指輪だった。
透明のリングの中にピンクの花びら。
「………いつの間に…」
「俺が値切り交渉してる間、お前見てただろ?」
「…うん。でも買ってた形跡なかった…」と言いかけてあたしは、はっと口を噤んだ。
そう言えばこいつが金払ってるとき、こいつの鞄の中身がバラけて……
「あの時!!」
「そゆうこと。あんまあからさまに買ってやるって言ってもお前絶対要らないっていうだろうと思ったから」
う゛。確かにその通り。
「んじゃ、最初から全部仕組んでたってことかよ」
値切り交渉も、鞄の中身をぶちまけたのも……
「仕組むとか言わないで欲しいな。作戦だ。作戦」
作戦て、やっぱこいつわっかんねぇ!
戒はあたしの鼻先をつんと弾くと、繋いでいた左手をゆっくりと引き離した。
そしてそのまま左手を取り軽く持ち上げると、あたしの薬指にそっとさっきのリングをはめ込んだ。