唇にキスを、首筋に口づけを
救出と喪失


この大規模で危険な作戦の決行日がやってきた。



開始されるのは日が昇る10時頃だ。



まだ、日がでている時の方がヴァンパイアの活動が少ないからだ。




俺は今日、魔界に入り込む。




俺は自室で武器の確認を行う。



剣の刃、銃弾の数、今日の身体の調子も万全。



あとは、時を待つのみ。



家を出なければならない時間となり、


俺はバイクにまたがり森へと走り出した。




森の入り口に到着すると人が集まり始めていて俺の姿をジロジロと見る。




自信を持て、俺。



きっと、大丈夫。




そして9時半になり、


会長から作戦の詳細が伝えられる。




「10時ちょうどに、結界師は結界境線の力を解いてもらう。


そしてその瞬間に内田爽哉が魔界へと侵入する。



そして、その開いてしまった魔界と人間界の扉を超えてたくさんの魔物が侵入してくるだろう。


それを、皆が始末していく。



24時間以内に内田爽哉が帰還することがなければ、結界境線を復活させる。



以上だ。

命がけの作戦だ。皆、意志を固めろ。」



そう言うと皆がはい、と頷いた。



今日この作戦の前に、皆遺書を書いてきたと言う。



俺は、他人に遺すものなど何もない、


家族なんて、ゆりな以外にいないから。



9時55分。



作戦開始5分前、俺は結界境線の前にいた。




俺は気持ち悪いくらいに落ち着いていた。



俺なら、できる。




ゆりな、待ってろ、すぐ行くから。





「10時00分まで、

残り10秒。」



作戦開始の時刻がもうすぐ目の前に迫る。


「5.4.3.2.・・・1」




バッ、

俺の前にあった結界境線がズサっと消えた。



なんだかそれは美しいものにも見えた。




しかしそんなことに思い馳せている場合ではない。



進め、俺。




俺はバイクのエンジンをふかすのだった。
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