唇にキスを、首筋に口づけを


そうこうしているうちに私の家の周辺にやってきた。



さすがにほとんど初対面の人に家の所在を教えてはならないでしょ。



「もうここで大丈夫。」



「この辺りなの?」



「うん、あと30秒くらい。」



「それは大袈裟に言ってるだろう。」



「ほんとほんと。」



嘘。



ほんとはここから10分くらいかかる。



「そっか・・・、」



なんだかジュンくんは悲しげだ。






「どうかした?」



私はジュンくんの顔を覗きこんだ。



するとその瞬間にジュンくんは顔をあげた。



私が顔を覗き込む必要はなくなって私も必然的に顔をあげる。







キュッと唇を噛み締めている。



「聞きたいことがあるんだけど。」



なんだか妙に響く声。

ギュッ、


そして何故か手首に圧迫感。



これは、なんだ。



手首、掴まれてる。



けど、そこまで痛いわけでもない。



今にも消えそうな儚い力。



切実に願うような目をして私を見てる。




紫色の、瞳で。



ドクン、胸が何かにたたかれたなのような強い衝撃を受けた。



何を言われるのか。



何を聞かれるのか。



私の心臓は加速していく。



もう、一体何?




「連絡先、教えてくれない?」



・・・。


え?


連絡先・・・?



え、あ、え?



正直拍子抜けなんだけど。



それだけ・・・?



それだけなのにあんな緊張感を醸し出していたの?



う、うわあ、


何かを期待していた自分が恥ずかしい。




「ダメ、か?」



私が頭の整理をするため黙っていたからか、


彼は何だがさらに切なげに言った。



う、その目やめて。



あ、やばい、


その子犬みたいな目で見られたら断れないって。



あざとい、あざといよ・・・!



「っ〜・・・。

うん、いいよ。」



にこ、なんて笑ってる自分がいる。



そしてケータイを取り出してる自分もいる。




「ありがとう!」



・・・、


こんな満面の笑みで言われたらことわれないでしょ、誰でも。





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