執事と共にバレンタインを。
「いや、こんなことがあったから貰えないんじゃないかと思ったよ」

「そんな、叔父様に、好きもありがとうも伝えないなんて、」


シラヤナギは、一瞬目を見開いて黙った。


「……大旦那の照れた顔なんて、ここ何年も見た覚えはなかったが、確かにそう言われると照れるね」


と、祖父と同じように少年のような顔でシラヤナギは頭を掻いた。


「叔父様も、必ず全部食べてくださいね」


恵理夜は、見とれてしまうような笑顔で言った。


「ああ、もちろんだ。ありがとう、恵理夜」


そう言ってシラヤナギは、優しく恵理夜の頭を撫でた。
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