執事と共にバレンタインを。
「試してみる?」


恵理夜は、一回り小さいチョコレートが乗った皿を差し出した。


「一口で、食べてね」


春樹は、言われたとおりそれを口に入れた。

表情豊かとは言えない端正な顔。


――その切れ長の眼が、一瞬大きく開かれ、見る間に涙が滲む。

そしてついに耐え切れなくなったのか口元を押えた。
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