姉妹
「美紅ちゃん酷いよ」
「人としてそれはない」


確かに


絵梨花の発言に1番納得していたのは他の誰でもなく美紅自身だった


普通は戸惑ったり焦ったり少なからず罪悪感を覚えたり心配したりするはずだ


それを笑うなんて

心のそこから喜びを感じてしまうなんて


そもそも私という人間は他人の不幸を「特に」願ってはいけないはずだ

私の中には強い「悪魔」が巣くっているのだから

キリスト教的にいえば、「生まれながらに罪深い」ということになるのかしら



ぼーっとした焦点をようやく合わせた

クラスメイトたちの非難の目
絵梨花の勝ち誇ったような微笑

懸命に美紅を庇い続ける美月


全てが嘘っぽいが全てを信じられた

ありのままに
そのままに
ただ純粋に

美紅は状況を受け入れた


そして愛おしくてたまらないという視線を美月に向けた

「悪魔」には相応しくない慈悲の目で見つめて言った


「姉さん、もういいわ」


どうもありがとう

本当にありがとう
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