姉妹
扉の直前で美紅は急停止した

そして扉に顔を近づけて「どちら様ですか?」と尋ねる

確認もせずにうかつに扉をあけることは美紅は決してしなかった

こんな田舎町では来客に警戒心を抱くということは少なかったため、美紅は自分が警戒しすぎだということは理解していた

美紅は元来慎重な性格であった

慎重で臆病であったため、つい最近見た刑事ドラマを忘れられなかったのだ

「宅急便を装って訪ねてきた元恋人に玄関で刺される女性」になりたくはなかった

そして「うかつに扉を開けてはならない」と学習したのだ


注意深く、慎重に、できれば宅急便ではありませんように

そう思いながら尋ねた

しかし答えは返ってこない

美紅はいぶかしがって不安交じりにもう一度尋ねた

「…どちら様ですか?」

「さ、榊原晴樹です」

「え、晴樹くん!?」

美紅はがらっと勢い良く扉をあけた
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