姉妹
「数年ぶり、ですか」

「そうだ数年ぶりだ。晴樹くん、君は見たところ鋭い子だ。この家に着てから数分と経っていないというのに、既にいくつか疑問に思っていることがあるんだろう」

「・・・はい」

「言ってくれると嬉しいね」

「あの、疑問というか些細な違和感なんですけど、お祖母さんの美紅さんに対する態度が少し冷たいというか、普通じゃないというか…」

「その通り。『普通じゃない』全くその通りだよ」

「なぜですか」

「それはじきに分かる。身勝手ながら、今はまだ知らせたくないんだよ」

「わかりました。あとひとつあるんですけれども」

「なんだね」

「美紅さんのご両親は不在ですか」

「ああ。二人ともあの子達が生まれてまもなく姉妹のもとを去った」

「お亡くなりになったんですか」

「うかつに「死んだ」と言わないところが丁寧だね。そうかもしれないし、まだ生きているかも分からん」

「・・・これも「今はいえない」ですか」

「察しが良くて助かるよ」

「そうでもないんですけどね…」

「突然だが、本題に入るよ」

急に善蔵の空気が変わったことに晴樹は気がついた

優しく全てを抱擁する空気ではない

これから善蔵が言うことには真剣そのもので答えなければならないと悟った
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