ラブソングをもう一度



「あたしね、ここで海に出会ったんだよ」

普段はいい加減なくせに、こういう話には、真剣に耳を傾けてくれる和泉。

あたし達は、時計台の下に立ち止まった。



「病院から帰ってね。うちに居たんだけど、あたしもお姉ちゃんも何も話さなくて。いたまれなくてね。ギター持って一人でここに来たの」



悲しい顔もせず、うんうん、と頷く和泉に、少し安心する。



「そして、はじめて一人で歌ったの」


「いつもは隣に、俺が居るからね」


「そう。だから、少し怖かった。だけど、わくわくしたの」



新しい世界に飛び込んだ気がした。

大きな時計台の下では、自分がとてもちっぽけだと感じた。



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