君に嘘を捧げよう
はじまり
高校の入学式の日。
「タクト!」
「…は?」
知らない女の子が俺のところに駆け寄ってきた。
「タクト!タクトでしょ?!いままでどこ行ってたの?
みんな心配してんだからね!」
確かに俺の名前は霧沢タクト。
だけどこんな女の子見たことない。
「あの、人ちが…」
「もう!わたしという彼女をおいてなにやってたの?」
その女子は、肩のラインで切りそろえられた髪の持ち主。
まつげも長くて、目もぱっちり。
スタイル抜群だし。
どこかのアイドル事務所にいそうな可愛い女の子。
こんな女の子が俺の彼女なんて…。
「ありえんありえん」
なんせ生まれてこのかたモテたことのない俺だし。
成績も運動神経もフツー。
顔は…近所のおばちゃんに何回か「ジャ〇系やなあ」と言われた程度。
なんか悲しくなってきた。
「あの、やっぱ人ち…」
「おかーさーん!タクト!帰ってきたー!!」
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