君に嘘を捧げよう

この子…人の話を聞いてない…。

そして女の子のお母さんまでやってきて、

「まあ、タクトくん!久しぶりね!!」

俺を『タクト』と信じこんでしまった。

全然記憶にない。

どっかで会ったのかな、と俺は思い込んで、

「あ、ああ、久しぶりッス」

とテキトーに話を会わせた。



あんなこと言わなきゃよかった。

あれからがんばって思い出そうとしても全然記憶にないし、そもそもあんな可愛い子を彼女にしてたら忘れるわけがない。

でも、わかってるようなことを言ってしまった。

つまり俺は、もう引き返せない。

嘘を突き通すしかない。

ニセの『タクト』を演じなければいけなくなったんだ。



そして、これがすべてのはじまり。
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