君に嘘を捧げよう
あのあと知った。
彼女の名前は鐘四里アヤネ。
アヤネが付き合っている『タクト』は、2年前に失踪した。
どうやら2人は幼なじみのようだ。
『タクト』はなんと俺と苗字も一致。
アヤネが見せてくれた『タクト』の写真は俺にそっくりだった。
「こんな偶然ってあるんだ…」
「何?」
「いやなんでもない」
入学式の帰り、俺はアヤネと帰っていた。
ニセとはいえ、なんか女の子と帰るのは違和感がある。
でも、バレないようにふるまわんと。
「ア、アヤネってさあ、どこに住んでんの?」
「タクト、そんなことも忘れちゃったの?」
……そっか。幼なじみだし家くらいは知ってるか。
「あはは、うん、ごめんな」
俺はテキトーにごまかした。
そして彼女は思いがけない言葉を発する。
「いまから来る?」