君に嘘を捧げよう

6時間目の数学。いつもなら眠くなる時間。

だけど。

「キス…キス…」

俺はバッチリ目が覚めていた。

やっぱりされたら嬉しいもんなんだろうか。その…キスというものを。

きのうの先輩も言ってたし…。

でも俺には無理だ。

俺は『タクト』じゃない。

アヤネが好きなのは俺じゃなくて『タクト』だし。

アヤネを騙してる俺には、そんな権利ない…。

俺の視線の先は、前のほうの席にいるアヤネの背中。

「おい霧沢!聞いてるのか?」

「え?あ、はい」

「まったく、よそ見するなよ」

「…はい…」

「霧沢どんまーい」

「真面目に授業受けろっ!(笑」

クラスがちょっと笑いにつつまれたとき。

「…あ」

アヤネと目があった。けどすぐそらされる。

「…」
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