消えてゆく


そんな倉田家に、ある日驚く様な知らせが届いた。

市朗が4年前に書いた小説「雨の日の交差点」が豪華キャストにより映画化される、というものだった。


この映画化によって、市朗の作品が世間に広く知ってもらえるかもしれない。


早苗は嬉しい気持ちはもちろんあった。


しかし、今までの生活が変わるかもしれない事に、ほんの少しの不安も感じていたのだ。




その日の晩、早苗はいつもより少し豪華な夕飯を作った。


そして、学校から帰ってきた由季に市朗の小説が映画化する話を伝えると、由季はぴょん ぴょん飛び跳ねながら「すごい、すごーい」と無邪気に喜んだ。


それを見て、市朗も笑った。


「そうかー、嬉しいか由季!」


市朗は由季の頭をなでながら言う。


いつもと変わらない団らんがそこにはあった。


“大丈夫。私達は何も変わったりしない。”


早苗は少し安心した。


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