雪割草
「あの~、すいません……」

 聞くところによると、彼らは隅田川の段ボールハウスに暮らしていた人達で、川が溢れそうになったので隅田川から新宿まで歩いて来たという……。
もし、空いているスペースがあれば、自分達もここへ住まわしてほしいとの事だった。

 直ぐにシローはこの事態を、イタジイの処へ相談しに行った。

外に出てみると、予想以上の雨風で、よくもまあ歩いて来たものだと、感心せずにはいられなかった。

 イタジイは説明を聞き終え、顎の先を片手でさすりながら、

「まあ仕方ないじゃろ。今日のところは公衆トイレの中に寝かせい」

 自分の部屋から新聞紙をごっそり持ち出して、彼らに手渡した。

「ありがとうーーーありがとうございます」

 安堵感からか、一人がその場に崩れ落ちた。


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