雪割草
第六章~出会い
 今から三年前のこの時期、関東地方には台風十六号が直撃していた。

東京の交通網は完全にストップ。
所々停電する箇所も出始め、都内を流れる荒川や隅田川などは今にも氾濫しそうな勢いだった。

 そんな状況の中、新宿中央公園の住人達も、いつ暴風雨で飛ばされてもおかしくないような段ボールハウスの中で、じっと台風が過ぎ去るのを待っていたのだった……。


「すいませーん。すいませーん」

 もう、深夜の十二時は過ぎていただろう。
この雨と風の中、表の方で人の声が聞こえてきた。

「すいませーん。誰か居ませんか?」

 その問い掛けに、シローは恐る恐る部屋の入り口から首だけを出して、表を覗いてみた。

すると、公衆トイレの所にうっすら、こっちを見ている四・五人の人影が見えた。
その人影はシローに気付いたらしく、そのまま段ボールハウスに近づいてきた。

近くで見ると人数は全部で五人。
一人は雨合羽を着ていたが、あとの四人は上から下までズブ濡れで、顎のところからは雨が滴り落ち、皆プルプル震えていた。


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