雪割草
 お金を払い終えた男は、香奈のところへ戻って来ると、

「はい、どうぞ」

 風邪薬の入った紙袋を手渡してくれた。

「あ……。ありがとう……。」

 両手で包み込むように受け取り、二人で駅ビルを後にした。

 表に出ると、先程までの雨はあがっていた。

「ホントに、ありがとうございます。

もっと、たくさんお礼が言いたいけど、ゴメンナサイ……。

あたし、行かなくちゃ!」

 香奈は深く頭をさげ、路地裏の暗闇へと走り出して行った。

「あっ!ジャンパー」

 シローのジャンパーを脱ぎながら、男は香奈を追いかけた。

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