雪割草
 二人でリヤカーを運んでいると、四号線は次第に険しい道へと、その表情を変えていった。

坂道の傾斜も厳しくなり、シローと上田の足取りも重くなっていった……。

「大丈夫ですか?」

 シローは振り向き、上田を気遣った。

「大丈夫ですよ。全然……。」

 荷台を押す上田がその言葉を発したとおもうと、前方にはトンネルが現れてきた。

この長い旅路の中で一番の難所であろうその坂道のトンネルは、大きな口を開けながらシロー達を待ち構えていた。

 トンネル内に足を踏み入れ、顔を伏せながら歩いていると、外気よりも少し生暖かい温度差に不気味さを感じた。

車道のすぐ横を併走して通る坂道の歩道を、排気ガス混じりの咽ぶ風に怯えながらリヤカーを運んだ。

「ゴホッ!ゴホッ!」

 トラックが通り過ぎる度に、上田は手で口を抑え咳をしている。

 ようやくトンネルを抜けると、二人の視界には紅葉で染まる山々の景色が広がった。

< 149 / 208 >

この作品をシェア

pagetop