雪割草
 その頃、上田も別の部屋で取り調べを受けていた。

「あんた!いつまで、そうやって黙ってるつもりだ?

無駄な時間を過ごすだけだぞ!」

 パトカーに乗っていた年配の警官が担当だった。

「………………。」

 上田は黙秘を続けた。

もう二時間位は、ずっとこの調子だった。

「あんた、家族とかも居るんだろ?

いつまで経っても、これじゃあ帰れないよ!」

 呆れ顔しながら、その警官は言った。

「………………。」

 上田は机の上に両手を重ねて置き、ずっと目を閉じていた。

すると、

ガチャ……。

 別の警官が取調室に訪れ、しずしずと年配の警官に耳打ちを始めた。

小声で話しているようだが、上田には何を話しているのか察する事が出来た。

「じゃあ、検死の方にも伝えておきます」

 最後に一言だけ言い残してから、その警官は扉を閉めて出ていった。

年配の警官は上田を横目で見ると、

「さあて、そろそろ何か喋ってもいいんじゃないか?」

 頭を掻いた。

静かに目を開け、上田は重い口を開いた。

「すいません……。

電話を貸して下さい……。」

「はあ?」

 そこに居合わせた警官は、二人で目を見合わせた。

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