雪割草
第七章~set to work
 あれから、もう三年か……。

シローは焚き火を見つめながら、もの想いにふけっていた。

背中を丸め焚き火に当たっていると、後ろから肩を叩く者がいた。

ニシヤンだった。

「今夜は一雨きそうだ。早めに仕事に行こうぜ」

 右手の手首を掻きながら言った。

「うん、そうだな。ちょっと待っててくれ、上着を取ってくる」

 シローは席を立ち、段ボールハウスに戻って行った。

 家の中では美枝子が縫い物をしているところだった。
オイルランプが小刻みに揺れる度、二人の影を重ねていった。

シローは掛けてあったボロボロのジャンパーを取ると、

「美枝子、そろそろ仕事に行ってくる」

 と、声をかけた。

「あらっ、いつもより早いわね」

 縫い物の手を止め、シローを見上げた。

「ニシヤンが、雨が降るから早めに出ようってさ。手首の傷口でも痛むんだろう」

「気をつけてね。行ってらっしゃい」

 そう言って美枝子は立ち上がろうとした。

「いいって、いいって。じゃあ行ってくるよ」

 シローはジャンパーを羽織りながら、表へと出て行った。

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