雪割草
第三十一章~北斗七星
 シローはまた一人に戻り、リヤカーを引きながら北上の旅を続けていた。

那須の峠を越え゛小島゛を抜けると、谷間に架かる長くて大きな橋にさしかかった。

一歩……。

また、一歩……。

深い渓谷を見下ろしながら、欄干に沿うようにリヤカーを引いていった。

その長い橋を渡り終えると、

゛福島県゛に辿り着いた。

゛ようやく自分の郷里に辿り着いた……。゛

 心の中にはある種の達成感が生まれていた。

国道四号線を振り返り、今までの道程を思い起こしてみた。

しかし、先を急がねばならない……。

夕暮れが迫り、日が沈みかけていたからである。

 山々から吹き降ろす風に首を引っ込め、前を向き旅を続けた。

それは不思議と寒さを感じず、なんだかとても懐かしい匂いのする風だった……。

 夜になってくると、リヤカーを引く手を少し休め、ニシヤンから貰った軍手を脱ぎ、自分の息を吐きながら両手を暖めた。

おのずとーー夜空を見上げていた。

福島の夜空は二十数年前となんら変わることなく、無数の星をちりばめ、自分を迎えてくれているように思えた。

 シローは軍手をはめると、リヤカーのハンドルを握りしめ、

「よし!」

 北斗七星に向かって歩き始めた。


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