雪割草
 シローは口を半開にして言葉を失っていた。

そんなシローに田中が肩を叩いた。

「そういえば上田警視鑑から、あなたを目的地まで送ってほしいと頼まれていたんです。

どうしますか?」

 シローは即答した。

「いえ……。大丈夫です」

「多分、そう言うだろうと、上田警視鑑もおっしゃっておりました」

 田中は一礼すると、

「それでは……。

お気をつけて……。」

 きびすを返し、建物の中に戻って行った。

シローはその場に立ち竦みながら、空を見上げた。

ふと、今までの道のりを思い起こすと、゛出会い゛という偶然に心の底から感謝をした。

駐車場のリヤカーへと歩み寄っていき、

ふたたび


ハンドルを握りしめると、福島に向かって歩き始めた。

遠い空を見上げ歩いていると……。

また、少しだけ荷台が重くなってしまったような……。

そんな、気がしていた……。

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