雪割草
 「………………。」

 話を聞きながら、武雄はお茶を啜っていた。

灯りが煌々と照りつける部屋の中で、シローの話は続いた。

「それから、俺は川崎の工場で日雇いの仕事をしました。

三交代の厳しい仕事でしたが、お金はわりと良い方だったと思います。

段々と生活も安定してきて、そろそろ実家に送金でもしようかと思っていた矢先、クレーン車から荷崩れしてきた鉄パイプに足を挟まれ、そのまま病院に運ばれてしまいました。

しかし、入院生活が一週間程過ぎた頃、保険証を持っていない俺は高い治療費を払えないと思い、松葉杖を突いたまま病院を抜け出してしまったんです。

その後、ふらふらしながら辿り着いたのは、とある新宿の公園でした。

俺は、そのままホームレスになって、今まで生きてきたんです……。」

 最後の言葉を言い終えた頃には、シローの涙は枯れ果て、大きく肩で呼吸を繰り返すだけだった。

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