雪割草
 中野駅前のアーケード街に着くと、ニシヤンの思惑は的中した。

アーケード街の個人店などからなる様々な商店、例えば街の電器店・婦人服店・金物屋などからは、とても良い状態で段ボールを拾い集めることが出来た。

アーケードの出口付近になると、リヤカーの荷台は一杯になっていた。

シローとニシヤンも疲れ果て、リヤカーのハンドルの鉄パイプに腰を下ろしていた。

「いやー、ニシヤン疲れたな」

 シローは息を切らせながら言った。

「あぁ、でも段ボールが一杯になって良かったよ。

これで、なんとか目標に到達しそうだ」

 ニシヤンも息切れしていた。

すると、急に美枝子がトイレに行きたいと言いだし、仕方がないので道路の向かいにあったパチンコ店へ、トイレだけ借りに行くように指示した。

パチンコ店の自動扉が開き、店内から威勢のいい音が聞こえてくると、ニシヤンの言葉が胸の奥に引っ掛かった。


 ニシヤンはもう、二万二千円という金額を作ってしまったのだろうか……。

俺なんてまだ三分の一も溜まってないのに……。

やはり、二人で暮らしている分、生活費は余計にかかってしまう……。


 シローは考え事をしていると、美枝子が戻って来た事にも気付かず放心状態に陥っていた。

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